1.《ネタバレ》 アメリカの地方の町が宇宙人に侵略されて大変なことになった話である。舞台はほとんど地方の町とその郊外だけ、特撮関係は着ぐるみ宇宙人と少々の特殊効果と宇宙船の一部が映るだけである(+宇宙の絵)。ジャンルは一応SFということになっているが、実際は宇宙人が出る怪奇サスペンスドラマという程度でかなり退屈だった。
宇宙人は「アンドロメダの惑星」(a planet in the Andromeda constellation)から来たとのことだが、それだけではどの辺なのかの説明になっていない。しかし警察署長の台詞からするとうちの銀河とは別の銀河から来たらしいので、そっちの方にあるどこかの銀河と思われる(NGC 891など)。遠方からわざわざ地球まで来た理由が「生命のある惑星は少ない」からだというのは、今になれば少し新鮮な感覚のようでもある。
なお宇宙人が来た理由が「人間の女に我々の子を産ませる」ためだったという発想は、東宝特撮映画「地球防衛軍」(1957)の元ネタかと思ったら製作時期は逆だった。この映画に比べれば「地球防衛軍」など超豪華娯楽大作に思われる。
ところで日本語字幕では、宇宙人にとって「女は子供を作る道具だった」と書いて東洋の儒教的な人権抑圧の印象を出していたが、原語の台詞では「道具」とは言っておらず、要は繁殖のためだけの関係だったと説明していたようである。つまり結婚は子作りのためにするという固定観念を否定して、愛と幸せを得るためにするものだと言いたい映画だったようで、これは2020年代の現代でも比較的受け入れられやすい考え方と思われる。
主人公宅の宇宙人は結婚生活を通じて人の心がわかって来たようで、妻に受け入れてもらえないことを嘆いたりもしていた。妻に事実を告げたのも心を開いてもらいたかったからで、自らも愛と幸せを願いながら結局果たせなかった結末は泣かせるといえなくもない(泣かないが)。人類の持っている結婚の習俗に関して、それを持たない者の立場で語らせることにより、改めてその価値を際立たせてみせようとした映画だったのかと思った。
ちなみに終盤の人類側の大反攻では犬が大手柄を挙げていて(尊い犠牲あり)、動物との間でも心を通わせることのできる人類の強みが出たようでもある。今回の宇宙人はそういうこともできない寂しい種族だったようだ。