1.《ネタバレ》 「今度はクローネンバーグのパクリすか?」と思ったら、デパルマ先生の方が元祖だったようだ。人体爆発するシーンの前から作風がかなりクローネンバーグ(「スキャナーズ」「デッドゾーン」)に似ているなと思っていたけど、単にジャンルが似ていて、製作年が近く同種の古臭さを感じただけなのだろうか。まさか、クローネンバーグがパクるはずないしな。
映画自体は全く面白くないけど、デパルマらしさは随所に現れている。カメラワークは相変わらず流石だし、ロビンの最初の転落事故を再現するシーン(ギリアンと施設所長のやり取りの際に描かれる)の工夫には驚かされる。また、あのスローモーションの使い方は、今観ても、とても新鮮に感じた。デパルマの作品は、どの映画を観ても、必ず驚くべき演出がされている。もっと世間的に評価されてもよい監督だと思う。
しかし、本作のストーリーにどうしても入り込めないという印象を受けた。「デッドゾーン」もあまり好きではないけど、超能力者の悲哀だったら、まだ「デッドゾーン」の方がよかった。
友人に裏切られ息子を奪われ、息子を必死に探し続ける父親の姿も、観客を感動させるような流れになっていない。ラストでは、息子を救いたくても救えず、息子を救えなかったことへの後悔と、周囲を敵に囲まれ「もはやこれまでか」と感じたことから、父が息子の後を追って、身を投げるという悲劇的な展開なのに、ほとんど何も感じられないのは何かが足りないのだろう。
息子の方は、確かに空中浮遊はできるけど、あの落下事故は自殺に近いようなものではないだろうか。自己の能力を用いて、遊び感覚でアラブ系を抹殺し、監視役の女性も悲惨な方法で惨殺してしまい、もう自分が戻れないところまで来てしまったと感じたのではないか。だから父親が助けにきたとしても、父親にすがることもできず、父親を拒絶するしか、なす術がなかった。息子ロビンの気持ちは多少は理解できるかな。しかし、あの棒高跳びが、空中浮遊の伏線になっていたとは、夢にも思わなかった。