1.《ネタバレ》 事前知識なしで見たが「幼獣マメシバ」とリンクしているとは思わなかった。芝二郎というキャラクターを知らない人が見るとかなり当惑するのではとも思うが、まあ犬好きの人であれば一通り全部見て当然のように知っているのかも知れない。自分もたまたま見たことのある人物だったので笑わせてもらったが、さすが先行企画の主人公だけあって発言に説得力がある。「犬を擬人化するのも大概に」というあたりはケモノ全般に通じることだろうから、うちの家の者にも言って聞かせたいものだ(犬はいないがネコはいる)。
ところで、別に犬嫌いではないが犬好きでもない立場でこの映画を見ると、まるで“犬を愛する素質は全ての人にあり、それに気づくことで人は幸せになれる”といったような、いわば神の視点から教訓を垂れるような話になっている。劇中家族や犬好き関係者(一部)の理不尽な行動も、主人公を正しい方向へ導くために神が与えた試練だったのかと思うが、そもそも犬好きでない人間までを共感させるものにはなっていない。最初から犬好きの世界で閉じられた物語であって、犬好きとそれ以外の間を結ぶ話にしようとは思っていないようである。
また劇中では犬限定でない一般論として、相手の気持ちになって考えるとか同じところに安住しないで自分を変えるとか自ら動かなければ結果は得られないとか丸く収めるばかりが能でないというような断片的な人生訓が各所にちりばめられており、これはTVシリーズの方で使ったネタかも知れないが、この映画を見る限りそれほど心に染みるものにはなっていない。主人公が犬嫌いになったエピソードも経験者向けの内容ではあるが必然性が感じられず、またエンディングの歌は本編と全く別の話ができてしまっている。自分が見る限り映画全体としてのまとまりが感じられないが、最低限、犬が出ているというところで筋が一本通っていればいいということかも知れない。
それにしても何で犬嫌いのいる家でわざわざ犬を飼わなければならないのか。ネコにしておけばいいだろうが。