22.《ネタバレ》 傑作「スピード」で高い評価を得たヤンデヴヴォンが次でいきなり大ゴケした印象のツイスター。
何しろ導入部がいけません。
両親が女の子を連れて竜巻から逃げようとするわけですが、ここでなぜか犬を置きざりにします。
観客は当然思います。
「ちょ、犬!!」
必死に家族の後を追いかける犬。(カメラがフォローしているので意図的な演出のようです。)
しかしその犬を無視する両親。
無情にも犬の前で竜巻シェルターの扉を閉めてしまいます。
扉の前で「入れて入れて」と吠える犬。
「こいつら鬼か!死ね!」
もはや観客にとって敵は竜巻ではありません。
この鬼のような所業を実行中の両親です。鬼畜米英許すまじ!!
そのあとお父さんが竜巻にアホみたいにさらわれてしまうわけですが、観客は「ざまぁみろ」とむしろ溜飲を下げる思いです。
(ちなみに犬は助かる)
…それ、たぶんそれ監督の狙いと違ってます。
監督としては主人公女性が竜巻研究家になった理由(トラウマ)と、竜巻の恐ろしさの一端を最初に見せたいという意図による導入部だったのでしょう。
しかし観てる側としてはかわいい犬を見捨てた鬼畜生をやっつけてくれた竜巻むしろGJ!くらいの印象を持ってしまうわけで、その後、竜巻が多少暴れようが牛が空を飛ぼうが「しょうがない奴だな」くらいにしか思いません。
そもそもこの映画「ディザスター映画」に分類される事が多いようですが、実際のところ竜巻を追いかける冒険野郎を描いたインディジョーンズに近いタイプの映画。
この映画をディザスター映画だと思って「さあ大災害映像を観るぞ」とこの映画を観た人は、あまりの規模のしょぼさに逆の意味でド肝を抜かれる事でしょう。
なにしろしょせん竜巻ですからね。大破壊するにしても限界があります。
相手が弱すぎてそもそもディザスタームービーとして成立しない。
これは映画としてつらいです。
しかも日本人にとって竜巻はほとんど縁がないというのがさらにつらいところ。
観ていてもそこにリアリティや感情移入を感じる事もなく「ふーん、竜巻ってこんな感じなんだ」と他人事のように思うだけ。
アメリカの興行成績は知りませんが、日本でこの映画がヒットするのは最初から無理ゲーだったと言えるでしょう。