7.《ネタバレ》 今作の映画的な持ち味は、時に凄惨なまでの無骨さと硬派さだろう。
これについては、何と言っても主演のジェラルド・バトラーの影響力が絶大だ。
本来、この手の娯楽大作であれば、“ヒーロー”である主人公に対しての「好感」は必然であるはずだ。
しかし、主人公の絶大な強さと無慈悲さを前にしては、安直な好感を持つことは許されない。
ただひたすらに自らに課した使命感に燃え、それを遂行する様には、ヒーローへの憧れなどは超越し………ちょっと引いてしまう。
「殺す」と決めた相手を必ず「殺す!」、というこの狂気的に愚直な主人公の姿に燃える人もいるだろうが、個人的に好感が持てなかったことは、映画全体の娯楽性においてマイナス要因であったことは否めない。最終的にはデスクワークに追いやられた男が精神を破綻させてしまっているようにすら見えてしまう……。
そして、無慈悲で凄惨過ぎる主人公のキャラクター性は、映画全体のテイストにある意味きっちりと波及している。
何せ、冒頭から人が殺されまくる。ホワイトハウスを孤立無援の状態にするためとはいえ、シークレットサービスをはじめとするホワイトハウス内のほぼすべての職員が惨殺される様は、衝撃的だった。
加えて、ホワイトハウス周辺の市井の人々も、テロリスト側の決死隊によって無差別攻撃を受け殺されまくる。
この陰惨さが、冒頭だけのもので、そこからアガっていく展開のための布石なのであれば良かったが、クライマックスに至るまでそれが抜け切らないので………やっぱり引く。
もっと娯楽性を高めるための“前振り”は、今作にも確実にあった。
ファーストシーンでアーロン・エッカート演じる大統領は、主人公相手にボクシングのスパーリングをしている。
ならば、大統領が悪役をノックアウトさせるシーンは必須だろうが!
大統領の幼い息子は、ホワイトハウス内の構造をシークレットサービスも舌を巻く程に熟知している。
ならば、息子がその知識を駆使してテロリストを出し抜くシーンも必須だろうが!
他にも、北朝鮮のテロリスト軍団がリーダーを筆頭にあまりにも狂人的な描かれ方をしている点も、現実の世界情勢を風刺しているように見せて、実際リアルじゃないなと思わざるを得ない。
そういう“ベタ”な娯楽性に欠けていたことが、こういう映画に対して、そういうことを期待している者としてはあまりにいただけなかった。