1.《ネタバレ》 フランスのとある地方都市に建つ一軒の古い洋館。何処にでもあるようなその大きな建物には、強固なセキュリティに守られた広い地下室が備えられていた。持ち主は、世界的なベストセラーを幾つも手掛けてきた大手出版社のCEO。そこにある日、世界各国から選ばれた九人の男女が集められる。目的はなんと、その出版社が扱う世界的ベストセラー作家の人気シリーズ『テダリュス』の最新刊をこの地下室で約二カ月かけて、集中的に翻訳作業を行うためだった――。事前の情報流出を防ぎつつも世界同時発売を実現するため、期間中彼らは外部との接触は一切禁止、外出することも許されない。作業は一日の初めにちょうど20ページ分の原稿を渡され、翻訳が終わると全て回収される。完璧なシステムのはずだった。だが、翻訳作業が開始された直後、何者かによってネット上にその極秘のはずの原稿の冒頭部が公開されるのだった。しかも犯人はCEOの携帯に直接連絡をよこし、原稿の全文を公開されたくなければ、多額の現金を払えと要求してくる。犯人は確実に、この九人の翻訳家の中の誰か。果たして原稿を盗み、ネット上に公開したのは誰なのか?ベストセラーを翻訳するために集められた、そんな九人の男女に交錯する動揺と疑心暗鬼をスタイリッシュに描いたサスペンス・ミステリー。という、今までありそうでなかった設定に惹かれ、今回鑑賞してみました。なのですが、僕はさっぱり嵌まらなかったですね、これ。とにかく物語の見せ方が恐ろしく稚拙。完全隔離されたこの地下室から誰がどのような方法でこの原稿を流出させたのかというのが物語の焦点となるのですが、ここら辺の詰めが非常に甘く、サスペンスとしていまいち盛り上がらない。もっと脚本を整理してすっきり分かりやすくみせてくださいよ。それに、この九人の翻訳家のキャラの描き分けもイマイチで、誰一人魅力的な人物がいないのも致命傷でした。しかも彼らのうち主人公が誰なのかもかなり曖昧なので、観客が誰に感情移入して観ればいいのか分からないのも難点。唯一盛り上がったのが、中盤の原稿強奪シーン。ここはベタですけど、サスペンスフルでなかなか面白かった。でも、それも最後のオチで全て意味がなかったとする謎の自己破壊(笑)。こうなってくると、この設定を思いついたアイデアのみが唯一の長所かなと思ったら、それもなんとダン・ブラウンのラングドン教授シリーズ出版の際に実際に行われた翻訳手法とのこと。うん、見事に誉めるべきところがなくなっちゃいました(笑)。なんとなく知的でミステリアスな雰囲気に4点。