4.《ネタバレ》 無駄に長い。まず、プロローグとエピローグはいらない。本当に蛇足だ。これらは、ただでさえ長い映画に追加撮影されたそうである。
マイケル・チミノ監督、なにを考えていたんだ。付け足せば、面白くなるとでも思ったわけではないだろうが、監督はこの映画の撮影を心底愛してしまったんだろう。
だから、もっと撮り続けたかったし、不必要な人物描写の補完も楽しんでしまったように思える。とにかく全編、だらだらしていてテンポが悪い。
お話は、名作シェーンのバックストーリーともいわれるジョンソン郡の東欧系移民殺害事件を直接的に描くとして、期待の持てる内容だった。ところが、である。
超大作を作ろうとする監督の野心に見合うスケールを持った事件ではなかったのがまずかった。使った予算ほどの見せ場がない。だから監督が展開を膨らませなきゃいけなかった。
どうも長時間カメラを回して素材を蓄える行き当たりばったり撮影感が強くて、労力がかかっただけの退屈なシーンに時間を割きすぎている。
客を前のめりにさせるような展開を考えないためか予定されているクライマックスにうまく物語が進んでいかず、まどろっこしい。
事態が始まったと思ったらまた娼婦周りの面白みのないなんやかんやでテンションをリセットされる構成の悪さ。
映画の序盤でだいたい未来の展望を主役のジムは掴んでいるにも関わらず、娼婦とガンマンとの三角関係ばかりで
管轄区のみんなが死ぬまで何もできない役立たずなようにしか見えない。使えないベン・ハーといった感じだ。
編集の観点から、娯楽としては落第だと思う。実際の事件にはなかったとされる凄まじい銃撃戦を入れて娯楽性を提供してはいるが
そこまでの果てしない道のりが完全に観る側の鑑賞意欲を奪ってしまっている。
また、農民たちの武装蜂起がインディアンのような荒々しさであったり、牛泥棒をやむを得ないものとして肯定しているような発言があったりと
強者側の言い分も公平に扱おうという計算がノイズになっている。
画は美しかった。通りの人や馬車の群れなど、凄すぎて圧倒される。唯一といってもいい本作のオススメ要素だが
戦闘シーンで土埃が上がり過ぎて見えなくなってしまっているのはいかにリアルといっても考え物だ。
プレミア上映の翌日、新聞にて「自宅のリビングを4時間近く歩かされた気分」などと酷評されたが、確かにそういいたくなるのもわかる。
映画会社も倒産させた一作。なかなか手ごわいが、日本ではそれなりに評価されているという。娯楽に失敗しても、名画扱いはしてもらえるということ。