1.《ネタバレ》 子ども向けの映画と承知しつつ、内容について思いっきり突っ込んでみたい。
まず、目新しいストーリーであるはずのタイトルが示す「不幸せな物語」があまり不幸せな物語になっていない。子ども達に演技を高度な演技を要求しているわけではないが、不幸せ感が全く感じられない。長男は両親を多少恨んだり、長女は届かない手紙の話をしたり、演出家はラストの手紙のオチへとストーリーを振っているつもりになっているが、演出が悪すぎて全く振りになっていない。もっと感情を出して両親を恨んだり、自分たちの境遇を呪ったりしないとラストの手紙の効力が半減すると思う。
「家族とは何か」「本当の幸せ、不幸せとは何か」といったことを映画の冒頭からラストに至るまでの間に描かなければいけないところをラストの数分でストーリーとはほとんど無関係なところで描くから無理がある。
そして演出に全くキレがないため、どこにでも有りがちな映画でしかなくなっている。
子ども達に様々な不幸が身に降りかかるが、その克服方法の描き方があまりにもお粗末すぎる。
クイズで「「オ〇フ」の〇に字を入れてください。」といったようなものがあるがこの映画における危機からの脱出方法がまさにこの程度と言って良い。
ヒントを散りばめすぎていて、かつあっさりすぎているため、観客は全くドキドキ感を感じないのではないだろうか。もう少しギリギリ感を出してタメを作らないと、この手の映画としては失格だろう。一応結婚証書ではタメているつもりになっているところもあるが、タメという効力よりも、観客にイライラ感を与えているだけになっているところもある。
せっかく子ども達には、発明力と暗記力と噛むチカラという特性を備えているのに、これらのチカラをあっさりと描きすぎているのも問題だ。この最悪な状況からどうやって抜け出すかを少ないヒントを与えて観客にも考えさせる位の演出と余裕も必要だと思う。
しかし相変わらずジムキャリーの演技だけは冴えていた。彼がいなかったらどうなっていたことか。相変わらずの上手さとオーバーアクションにならないギリギリのところで演技している。
ジュードロウに関してはもう少しクセを出さないとレモニースニケットという謎の人物のミステリアス感が感じられない。むしろダスティンホフマンにでもやらせた方がよっぽど良かった気がする。