1.《ネタバレ》 本作は98年にオーストラリアのグレート・バリアリーフで実際に起きた
ロナガン夫妻の失踪事件をモチーフにした、シチュエーション・ホラー。
この夫妻の場合、乗船名簿に始めから名前が無かった事から無理心中や保険金詐欺など
諸説あるし日本で言うワイドショーで連日報道した為、事件の有った海域は観光客が
激減した程でダイビングが趣味の人にはトラウマになりかねない映画とも言える。
しかし試写会の場所が品川プリンスホテルの温水プール、と言うセンスには疑問符だ。
この手の映画は、えてして演出してしまうものだが本作は回想やサイドストーリーを
挿入しないで、時系列に従って進む演出に終始してる。この点は評価して良いと思う。
そして作品は水面を常に捉えているが、その事で「水の上と下」=「現実と別の世
界」との境を表現しており、仕事に追われる生活が人生にとって意味が在るや無しやを問い掛けている。そして、こういった映画は最後がとても難しい。
残念ながらエンディングについては未熟なまま終わっている、監督の演出力不足は
否めない。ラスト3分の描き方で、この映画はもっと違う方向性にも成ったろう。
もちろん、ハッピーエンドなんて有りえない。
しかし現実に同じ状況になったら、私はスーザンと同じ行動
(鮫に囲まれた事で覚悟を決め、自らライフサポートを手放し入水自殺する)
かは自信は無い。でも人間としての尊厳だけは守りたいとは思ったし、
同じ観るならそこまで感情移入しないと、この映画は楽しめないかもしれない。