7.これは子供向けの映画だから、もちろん子供の視点に立って評価しなければならない。
その上で、これがジュマンジより良く出来ているかと問われれば……やっぱりノーと答えるしかない。残念だけど。
その差は瑣末な問題ではなく、もっと根本的な、言ってみれば骨組みの問題だ。
ジュマンジの何が優れていたかって、子供向けの映画でありながら、観客の子供たちに「大人になる夢」を見せてくれるところだった。
あの映画の主人公は誰だったか? 空き家に引っ越してきた姉弟だったろうか。違ったはずだ。
ジュマンジの構成は「ゲームが封印される場面」、次に「それを発掘した少年がゲームに閉じ込められる場面」、そして「数十年後にゲームが再開する場面」という順番で展開し、その上であのラストへと進んでゆく。
これは観客の感情移入と興味のベクトルを、ロビン・ウィリアムズ演じる「閉じ込められたまま大人になってしまった少年」に向かせる構成だ。
この構成によって、子供の観客たちも、知らず知らずのうちに、大人のキャラクターであるはずのロビン・ウィリアムズに感情移入できてしまう。ここに素敵な魔法があった。
ザスーラは一見するとそれに近いような要素をストーリーに組み込んではいるが、あくまで後から付け足した一要素に終始しており、生かす構成が無かった。
本作の物語は、兄弟がゲームを始めるところから始まる。これがジュマンジとの最大の違いだ。この始まり方をしてしまうと、後でどんな登場人物を出してこねくり回そうとも、子供が子供のまま冒険をして終わる、という一本道の物語にしかならない。
結局のところ、この映画は子供たちに魔法をかけてくれる映画ではなかった。
でも、特別でない子供向け映画の中ではまあまあ優れている方だ。
心には残らないだろうが、雨降りの日に退屈しているちびっ子に「これでも見とけば?」と見せるぶんには問題ない。