1.もうこれは、作品そのものが伝統芸能ですね。タイトルでいきなり「ご存じ」と言われましても困るんですが、いや実際「ご存じ」なんだから仕方がない。遠山の金さん映画です。途中の狂言シーンでは少し“桃太郎侍”が入った感じもありますが。と言う訳で、これぞ日本人のDNAに刷り込まれた定番の娯楽作品。と言いたいが、そうも言えないんですね。東映時代劇らしくムダに豪華なのは結構ですし、炎上シーンなどの見所もあるのですが、どうもオハナシが正直、要領を得ないのです。あれこれ小ネタのプロットを盛り込んで、ただでもゴチャゴチャしているのに(こうもゴチャゴチャしていると、要所要所でやたら都合よく金さんが登場する不自然さも、気になりません、気にする余裕がありません)、千恵蔵のセリフ回しが例によって気合い入りまくり、申し訳ないのですが、若干(笑)聞き取りづらいのです。いや正直に言います、何言ってるかわかりません(笑)。なもんで要するにこの作品、映画というより、伝統芸能なワケですね。細かいことは気にしなくても大丈夫、最後にはちゃんと(展開に無理やりなところ多々ありますが)お裁きの場となり、「金さんが証人になってくれます」「じゃあその金とやらを今すぐここに呼んでもらおうじゃねえか」といった感じのやり取りがあって…ああ、これ以上書くとネタバレですかね。そんなことないですよね、何しろ皆さんよく「ご存じ」でしょうから。そんな訳で、やっぱりこれは伝統芸能。とでも思わないと、ちょっと観てるのがツラいかな。格闘シーンなんかもすっかり様式化されてしまっており、千恵蔵が相手をちょっと小突けば(小突くいうより、相手の体にタッチしてるだけですけれど)、それはどうやら相手を殴った事を意味しているらしい、等々。伝統芸能にはお約束が多いのです。とほほ。