11.《ネタバレ》 おもしろくありません。
悲惨な描写があるという理由だけではなくて、根本的に作り方がヘンなのだと思います。
すべてが作り物っぽいのです。
一所懸命リアルに見せようとしていながら、こんなにわざとらしくなってしまうのもめずらしい。
なにかなあ、〝理念先行〟型の作品だと思います。
それは、「ここで善き人と悪しき人を接触させよう」とか「見えない人々が街頭を彷徨っている情景を撮ろう」とか「収容所内で、悲惨さを最も効果的に見せられる情景を撮ろう」とか、そういうことです。もう、理屈が先にあって、それに合った場面をいちいち撮ってつなげていくという乾燥した製作風景が浮かぶわけです。
作り手の頭の中には、一番先に終末思想があって、「来るべきものが来た」という感覚を観客に味わわせたいわけで、〝終末〟の風景を効果的に見せることしか考えていないので、それぞれの登場人物は「日本人」とか「中流の白人」とか「プア・ホワイトで犯罪者」とか「無力な黒人」とか「狡猾なラテン系」とかいう記号でしかないです。
記号でしかない登場人物を右や左に動かしてみても、観客は誰にも感情移入できません。感情移入できないということは、ほかによほどの要素がなければ退屈であるということです。
圧倒的に「意味づけ」が足りません。たとえドキュメンタリーでももっとマシなものになるでしょう。
収容所内の悲惨なシーンについても、「さあ、ここはラストの感動に備えて〝悲惨さ〟をたっぷり味わってもらうところですよ」的なものしか感じられません。
この監督はあまりスケールの大きな話やSF・ファンタジーの類に向いていないのではないでしょうか。
日本語のセリフはネイティブの日本人が書いていると思われるので、その点については評価しますが、なんだか伊勢谷も木村も日本語のセリフが上ずっていておかしかったです。伊勢谷はとても下手ですが、平気でカレを使ったということは日本人の演技の下手さはわかりにくいもののようです。私は押尾学がこの役をとてもやりたかったのではと思いますね。今となってはどうでもいいことだが。