1.焦燥感を煽るタイトルとジョン・レノンの少年期を扱った作品との触れ込みから、孤独な少年が行き場のない感情を音楽で表現してゆくうちに才能に目覚めるまでを描いた青春モノと想像していましたが、かなり趣が異なりました。史実かどうかはわかりませんが、作中で描かれるジョンは厳格な育ての親の元で成長した彼はひとりぼっちでもなんでもなく、偶然出会った育ての親の影響でエルヴィス・プレスリーなどロックンロールを知り、バンドを組んでライブをするうちに女子にもモテ出し虚勢を張ることを覚えたそこらへんの軽そうなバンドマン、という姿でした。本作の核は音楽ではなく、ジョン育ての母と産みの母を受け入れるまでが物語となっています。しかしながら家出したかと思いきや自室のベッドで朝を迎えて気まずそうな顔で母と顔を合わせたり、ねだってギターを買ってもらったりと、劇中のジョンは私が持っている孤高の天才というイメージとはかけ離れており、ある意味彼も普通の人間だったのだなと思わせられました。ビートルズ周辺を愛する方にはこれ以上ない作品かと思いますが、出自をめぐるドラマに感情移入できず、この時代にさしたる関心もない自分には退屈な作品でした。唯一、2人の母と共に日光浴するシーンは素敵でした。やはりタイトルは改め『マザーズ/ジョン・レノンと二人の母』としてはどうでしょうか。