2.《ネタバレ》 原作は読んでいないがこの映画に関しては、どちらかというと見て損した部類だった。時間が137分もあるが、それでも恐らく原作での詳細な設定や描写が断片化して半端になっているところが多々ある。
社会性という面でいえば、2015年の時点でこの物語を映画化することの意図がわからない。日本国内向け公式サイトでは一応、「全体主義国家がいかに人間の精神を崩壊させていくかという普遍的なテーマ」を扱っていると書いてあるが、結局はこの時代またはこの場所限定のことにしかなっておらず、誰も今の自分に関係あることとは思わない。ちなみに楽園に殺人は存在しないという建前は当時本当にあったのか知らないが、そういう現実度外視の観念論は東洋でも好まれそうな気はする(大陸でも半島でも列島でも)。
ドラマとしては、悪人顔の主人公を始めとして主要人物に誠意が感じられず信用できそうにもなく、この連中は何をやっているのかと中盤くらいまで突き放した気分でいたが、終盤にかけてやっと人々の意思がはっきりして来てまともに見られるようになる。それはそういう構成にしたのだろうが、それにしても結果的には話がうまく出来すぎで、最後は勧善懲悪物のようになっていたのはどうかと思った。アメリカの娯楽映画だからこれでいいのかも知れないが。
ちなみに世界のどこの場所の映画でも英語で作るのはさすが世界帝国だと思ったが、昔の邦画にもそういう例(大陸系)があったと思うので他国のことはいえない。