1.《ネタバレ》 この如何にも西田敏行で御座います的なキャラクターイメージに則った諄いばかりの表情芝居があるから
一方で『アウトレイジ』の悪人顔が一層引き立つのだろう。
手紙のやり取りを題材とする原作というのだからそもそも映画として分が悪いのは承知で、雑貨店周辺や商店街の美術に
注力しようというのが序盤の長回しからも判る。
1969年という字幕と共に、座頭市のかかる映画館から大売出しの登りを立てたマーケットへとカメラは移動し、乗り合いバスが通過した奥に
女児二人が遊ぶ雑貨屋の店先に寄っていくというカメラワークは廣木隆一らしい出だしだが、
時代と世相の提示が絡むので致し方ないとはいえ、段取り臭さがモロに出ていてあまり面白くない。
それと折角の、ネットや携帯以前の「手紙を書く」映画なのだから、文字を書く行為を映画にしなければ。
書く者の手ではなく表情ばかりアップで映してどうするのか。
音楽の力を説くはずのエピソードも、大写しとなる歌い手の心理的な表情のほうに食われているように思える。