1.《ネタバレ》 偏見だとお怒りを買うかもしれないけど、私の中では“変態・連続シリアルキラーと言えば本場はドイツ”というイメージがあるんだよね。まあ“20世紀最悪のシリアルキラー”ともいえるヒトラーの存在が大きいのかもしれないけど。そんなドイツのシリアルキラー列伝の中でも、ペーター・キュルテンの様な大物じゃなくてフリッツ・ホンカなぞというドイツ人にも半ば忘れられたような小者をわざわざピックアップしてくる監督の趣味には驚かされます。犠牲になったのも老売春婦がたったの(?)4人、しかも自宅アパートで他人が火事を起こすまでまったく警察もノーマークだったというのも驚きです。このファティ・アキンという監督の映画は初見ですが、フィルモグラフィを確認するとそれなりにしっかりした作品ばかり、ドイツ映画で時おり現れる頭のネジが緩んだインデペンデント系のスプラッター監督とはほど遠い人みたいですね。ホンカの住居やたむろしていた酒場なども、その吐き気を催す様な不潔さを含めて高い再現度。そしてホンカ役の俳優もかなり本人に寄せた役造り、とにかくあの奇形かと思うぐらいの猫背は観るに耐えず、「もっと背筋を伸ばしてシャキッとせんかい!」と怒鳴りつけたくなります。犠牲になるのも見るに堪えない容姿のおばさんばかりで、よくこんな女優を見つけてきたなとある意味感心してしまいました。酒場の常連や職場の掃除婦夫婦もヘンな連中ばかり見せられた感じで、ほんとこの映画にはまともな人間はいないと断言しても過言じゃない。冒頭でホンカに眼をつけられたけどその後に全く登場しなかった少女が、ほとんどラスト近くに再登場してホンカに狙われる展開は、ちょっとスリリングで良かったかな。 正直言って観てしまったことをマジで後悔してしまうような映画ではあります。しかし監督の演出力はたしかに感じることが出来ましたが、そんな人がなんでこんな映画を製作したのかはナゾです。