1.《ネタバレ》 小津は、転ぶにしても、転び方あるのだと言ったと伝えられているが、それにしても、僕は、この映画で小津は、酷い転び方をしていると思う。なんか若尾のキスシーンあたりで、なんとか客を集めたというくらいではないだろうか。、、、とにかく、これは酷い出来だ。なんかもう、一人一人の感情の機微が全く伝わってこない。、、、、、中村鴈治郎は養育を放棄した息子が可愛い、暴力親父で、一度、旅を辞めて家族三人で暮らすと決意しておいて、どうしてそれを簡単に翻すのか、心の葛藤の映像がないし、それでいて、またすぐに京マチ子とよりを戻すのかも、煙草のシーンはありつつも、上手に描けているとはとても思えない。、、、、杉村春子の心の動きだって全く伝わらない。一度は一緒に暮らせると思ったのに、簡単に、「お父さんの門出ですよ」だなんて簡単に送り出せるのだろうか。、、、、、旅の一座の男と女の人間模様や、女の心の動きなら、圧倒的に溝口のものだし、溝口だったら、そうした個々の人間模様から、社会的不平等やら差別やらにまで射程が拡がっていく。ところがここには、そんな広がりは微塵もない。、、、、、、雨の喧嘩のシーンだって、黒澤なら、多分こんな描き方にはならない筈だ。こんな土砂降り、道を挟んだ軒下同士、声なんか殆ど聞き取れないのが普通ではないだろうか。だから、黒澤だったら、もっとリアルに、十分に会話が成り立たないようなシナリオを作るだろう。、、、、、、、この映画を見て、小津映画を見る気が失せてしまう人がいるとしたら、非常にもったいないことだと思う。