3.《ネタバレ》 【空の大怪獣ラドン:1956年】を投稿したとき、ちょうど【あばれて万歳】さんが当作品の投稿をされており拝読しました。それを機に、レンタル店でDVDを取り寄せてもらいました。時間はかかりましたが、その間に、他の皆さんのレビューも拝読した上で鑑賞・投稿させていただきました。
当作品が公開されたのは、私が小学校高学年のとき。ポスターの絵は格好いいと思いましたが…女の人が首長竜にくわえられており「この映画には、女の人が食べられるシーンがある」と直感しました。当時は【ジョーズ:1975年】などが流行っており、私は“人間が食い殺される”ということを想像するだけで怖くて仕方がなかったため、当然、当作品についても、映画館には足を運びませんでした。
後年、テレビ東京の午後に放送されたものを、途中(翼竜が町の人達を襲うシーン)から観ました。おそらく、↓の【さくぞう】さんが録画したときの放送では…と思います。私は「ああ、やっぱり…」と思いました。音楽にしろ特撮にしろ「日本映画低迷期(力作もありましたが…)である1970年代の映画の典型だな」と感じたのです。そして、木の枝で主人公達が繰り広げるラストシーンも「長い・くどい・見苦しい」と、悪い意味で印象に残り「映画館へ行かなくて正解だったな」と思いました。
今回、再見してみて、当作品の【特徴】は、他のレビュアーさん達が言い尽くして下さっていると思ったので、以下、【脱線話】を…。
今回、私は、ムク・ショウヘイを見るなり「あ…TVシリーズ・仮面の忍者 赤影(1967~1968年)の“白影のおじさん”じゃないか」と思いました。上述のテレビ東京の放送を観たときには、既に出番を終えていた(食い殺されていた)キャラクターだったんですね。観終わった後、白影こと牧冬吉さんをはじめスタッフさん達を調べたところ…監督の倉田準二さんと、脚本家の一人である伊上勝さんは【赤影】のコンビだと知りました。きっと牧さんは、お二人から声をかけられての出演だったのだろうと思いました。
♪優しいおじさん白い影。三人揃って力を合わせ…これは【赤影】の主題歌の3番の歌詞の一部です。ムク・ショウヘイが単なる役柄だったとはいえ、“優しい白影のおじさん”が、あのような最期を遂げたのは、悲しかったです。
年配のレビュアーさんならご存知かと思いますが、【仮面の忍者 赤影】は、残酷描写が皆無の明朗で真っすぐな作風でした。赤影・青影・白影といった忍者達のデザインや繰り出される忍術は、時代考証は横に置き、自由奔放で無邪気さに溢れていました。今から数年前、我が子が幼い時にDVDで第1部(金目教篇)をレンタルして観たのですが、「監督、この忍術のアイディアはどうでしょう?」「お、いいね!やってみるか!」といった活き活きした製作現場が目に浮かぶようでした。一緒に観た子供も夢中になり、しばらく二人で“忍者ごっこ”に熱中したものです(残念ながら第2部以降は、レンタル店から無くなり、観られずじまいとなっております…)。
それに比べ【恐竜・怪鳥の…】は血生臭くアダルトな場面もあり…と、あまりにも【赤影】とは対照的だと思いました。推測にすぎませんが「ジョーズのヒットに便乗して儲かればいいから…あ、そうそう、サービスカットとして女性の下着姿もお忘れなく」といった上役さんからのお達しで、倉田監督達は仕方なく作ったのでは…と思えてなりません。
なお【恐竜・怪鳥の…】の開始22分めに、赤ちゃんを背負ったお婆さんが、昔から伝わる子守唄を歌う場面があります。もし、あのように、その土地に根づいた雰囲気をもとに【赤影】のような作風にしていたら…億単位の製作費をかけたようなので【昔々、湖に潜む“ホオズキのように赤い眼をした竜=実は首長竜”に挑んだ者達がいた。それが現在でも伝説・子守唄として西湖に残った】といった時代劇にするのも可能だったと思います。忍者が登場するかどうかは別にしても、そのほうが、倉田監督達は、伸び伸びと本領を発揮して【ドカベン】との同時上映に相応しい作品になり得たのでは…と思ったりしております。おそらく当作品とは違った意味で突っ込みどころ満載になったでしょうが、ずっと好印象のものになったかと思います。
さて、採点ですが…【赤影】と【恐竜・怪鳥の…】の隔たりは10年です。“お家芸の時代劇の要素を盛り込んだ東映初のカラーのTV特撮番組”という意欲作だった【赤影】から10年の間に、映画会社・東映に及んだ諸事情を象徴する“迷作”が、この【恐竜・怪鳥の…】と言えるかもしれません。率直な印象は2~3点ですが、倉田準二監督・伊上勝さん・牧冬吉さん達に【赤影】で楽しませてもらった感謝の気持ちを込めて1点を加え、計4点とさせていただきます。