14.《ネタバレ》 同性愛ものはどうしても共感しにくいので、ストーリーに入り込めない。
特に男と男の性愛となるとそれだけで距離ができてしまう。
山のテントの中でいきなり男同士が絡み合ったシーンは唖然。
久々の再会で奥さんに見られているのも気付かず貪るようにキスするシーンにもドン引き。
完全に置いていかれた。
ただ、この作品は人物の心理が丁寧に描けていて、とてもリアルに感じられた。
主人公の二人よりも、イニスの妻アルマのやりきれない思いに同調する。
妻の立場からすれば、夫が他の人を愛していて、しかもそれが男だと知ればどんな心境だろう。
夫が男とキスしているのを目撃してもストレートに問いただすことができず、釣り道具を忘れた夫に注意するだけ。
その裏にある感情の乱れがビンビンと伝わってくる。
ラリーンも関係に気付いているようだったが、アルマよりは割り切っているように見えた。
イニスが幼い頃に見たゲイの悲惨な末路が、ジャックの死の真相を暗示していたよう。
ジャックの両親とイニスの会話はいろんな感情が交錯してみえる。
ジャックがイニスの替わりにテキサスの男と牧場を持とうとしていたことがわかるが、それを聞いたイニスの表情が印象的。
父が息子の遺骨をジャックに渡さないのも、二人の関係に気付いて複雑な思いがあるからか。
この作品では、隠された事実や本音、それに気付いたときの心の動きが見事に描き出されている。
アン・リー監督の手腕と、役者も良かったのだろう。
とはいえ、やっぱり主人公に共感や感情移入できないというのはネックで、感動的に見せるシーンでも感動はできなかった。