1.一応管理社会のような設定が冒頭で示されますが、描かれるのは何ら特別でない現代社会のようで設定にほとんど意味がないどころか却って物語が陳腐で嘘くさくなっているように感じます。個人の視野の狭い世界を描くという体で社会の方へ目を向けることを放棄しているようにも思えます。1:1のアスペクト比はスマホ画面というより西洋の肖像画に近く、かっちりした美しい構図を生み出しているとは言えるでしょう。しかしいざそのアスペクト比が横に広がり通常のビスタサイズになってしまうとそれは解放感というよりもむしろ通常の映画と変わらない平凡で退屈な画面という印象を受けてしまいます。彼らの望む幸せ自体が平凡なものでしかないという皮肉なのかと勘ぐりたくもなります。スーサイド・スクワッドみたいな妄想シーンがあるのには苦笑いです。ミュージックビデオ風の演出もいかにも通俗的で特筆すべき内容のある映画だとは思えませんでした。