6.《ネタバレ》 金大中拉致事件を扱った本作ですが、どうも面白くない。韓国内での政治的イザコザが発端で日本を舞台に韓国人同士で起こした暗殺未遂事件で、罪なき人間が何人も殺されたというわけでもないので、はっきりいって地味。映画内でもこの事件に積極的にかかわった日本人は、一人の自衛官だけ。しかも、関わるまでの流れが強引。
事件背景はほとんど描かれず、金大中が日本に亡命する流れも最初に字幕で流れるだけなので、どうもわかりにくい。人間ドラマと観るには、主人公ですら薄いし、新聞記者、体に傷のあるヒロイン、日本語をしゃべれない在日のボディーガードなども存在意義も深味もほとんどない。
この事件後に日韓の関係がどう変わったかなども描かれるわけではないし、どちらも批判的に描かれるわけでもないのは冷静でいいのだが、熱を感じなく、最終的にアメリカだけを悪者にしてまとめてしまった感もある。
結局何で日本人監督が日韓合作でわざわざこの題材を取り上げたのかが不明。日朝間の数ある根深い問題の中で、この事件を取り上げた以上はもうちょっと観るべきところ、考えさせるべきところを作って欲しかった。やはり色々枷があったのだろうか。
阪本監督のジトっとした重厚な作風は好きなんですけどね。