30.《ネタバレ》 デニーロの演技が見事。
コミュニケーションがうまくとれずに孤独感に苛まれる。
好きな女に対する真心を不当に拒絶されたと思い込んで憤る。
相手の気持ちを汲む能力がなく、自分勝手な思い込みで行動するのが痛々しい。
だから周囲も距離を置き、ますます孤独感を深めていくという悪循環。
自省することがまったくないので、悪いのはいつも相手や社会というのがお決まりコース。
ヘドロのように負の感情が溜まっていく様子がリアル。
社会の底辺で暮らすどうしようもない閉塞感から抜け出したい思いも手伝って、街のゴミを片付けるという大義名分のもとに暴走。
やることなすこと終始ズレてる感じ。
ベトナム戦争の後遺症や社会の暗部が、病んだ人間を生んでいるという側面はあるけど、こういう人格障害的なコミュニケーション能力の低い人はそういうことに関わらず存在する。
日本でも問題になった通り魔事件と、犯人像に共通点がある。
鬱憤ばらしの対象が、悪人だったか、普通の人々だったか、子供だったかという違いはあるけど。
トラヴィスが殺害したのは悪事を働いている人間だったので、家出して売春していた少女の親からは感謝もされたが、本人はただ自分自身のガス抜きをしただけだし。
閉塞感や孤独感を抱えている人間は今の日本にだっていくらでもいるだろうし、そういう気持ちと折り合いをつけて生きていかなきゃいけない。
鬱屈した人間をよく描けているとは思うが、こっちまで病んできそうなブルーな気持ちにさせられるので、主人公も映画も好きにはなれない作品。