1.《ネタバレ》 自分の妻の不倫を、記憶喪失の男を利用して精算させようとする計略は、大変すばらしいと思う。ちょっと考えつかないようなアイデアだ。しかし考えがすばらしければすばらしいほど、およそ現実性がないと思う。ちょっとした手違いや突発的なことで簡単に崩れるはずだ。そういう思わぬことに対して十分に計画が練られているようにも思えず、おあつらえ向きの記憶障害者が飛び込んでくる偶然に頼っているようではお粗末だ。
映画全体に緊迫感が足りないと思ったらあの音楽だ。いくら何でもドヴォルザークの「家路」はないだろう。雰囲気をぶちこわしているしか思えない。それにタイトルだ。邦題は原題をそのまま訳したものだが、いくら何でもそのまんま。味も素っ気もなし。
前年の「雨の訪問者」が良かっただけに、非常に期待はずれだった。