1.《ネタバレ》 川津祐介が演じた男は、とっても卑劣だ。
別にスケベなのはいいのだが、気弱な口調で従軍看護婦に手淫を願い出て、股にまで足を挟む。
普通の男なら、あんなことは看護婦に頼めないはず。
もし現実にあんな男がいたとしたら、とんでもなく陰湿でスケベな男なはずだ。
でも最期は飛び降り自殺をしたから、まあ許されるか・・・
当時観れば、スケベでセンセーショナルな題材たっぷりな内容なのかもしれないが、現代から観ると大したことはない。
そして小話が何個もつながって全体を構成したつくりになっているので、重厚感がない。
まるでオムニバス映画を、軽い気持ちで観ている気分になってしまう。
軍医と従軍看護婦とのロマンスが主な柱だとは思うが、それも後半に集中して描かれるのみである。
結局、従軍看護婦の、性的な部分を含めての、過酷な戦場を見せたかったのだろうが、散漫な印象はぬぐえない。
そして、いたずらをされる従軍看護婦役として、若尾文子が適していたかどうかが一番の疑問である。
若尾文子は十分に魅力的であったが、いたずらを受ける“天使”としてのキャラに無理がある気がする。
もう少し素朴な印象を持つ女優さんを、この役に抜擢した方が、より興奮度が高かったに違いない。
つまらないわけではないが、題材が先走りし、作品全体の完成度と重厚感は、他の増村保造作品に一歩劣る気がした。