11.《ネタバレ》 チョーク一本の価値がまったく違う世界。
中国の一面を垣間見るようで興味深い。
中学も出ていない少女が代理教員となる一見無理な設定にも、中国の農村ならではの説得力がある。
貧しさゆえのお金への純粋なまでの執着と、そこから湧き出るエネルギーが凄まじい。
かわい気のない主人公ミンジの自己主張の強さにはタジタジとなる思い。
足の速いシンホンが特待生としてスカウトされたり、ホエクーが家の借金のために出稼ぎに出ても、そんな事情はミンジには関係ない。
ミンジに大切なのは一人の退学者も出さずにお金をもらうこと。
他人の事情よりただひたすらに自分の都合で行動する押しの強さは、日本人には苦手な類。
それくらいの図々しさ、逞しさがないと、生きていけない国なのだろう。
でも、こんな自己主張の強い人間ばかりだと争いが絶えなくて疲れそう。
保護された環境で育った日本人が飛び込めば、とてもやっていけそうにない世界だ。
ホエクーの家の借金は集まった寄付で消えてハッピーエンドで終わったが、これはあくまで結果オーライ。
ミンジは決してホエクーを借金苦から救おうとしたわけではなく、ホエクー家の苦渋の借金返済計画を自分の都合のために台無しにしていたかもしれなかった。
ご都合主義の結末がちょっと引っかかる。
あの環境なら仕方ないとは思えるけれど、主人公に感情移入はできなかったし、主人公やホエクーの涙にも感動するまでには至らなかった。
ミンジが街で大変な思いをして探している中で、ホエクーも同じように大変な思いをしているのではと心配を募らせたということだろうが、最初の動機がシンプルにお金に対する強い執着だっただけに、取ってつけたようにも感じたからか。
探しに行くまでにミンジとホエクーの間にもう少しつながりが描かれていて、ホエクーを思いやる気持ちがもっと伝わってくれば、また印象が違ったかもしれない。