4.《ネタバレ》 突如、12年ぶりに姿を現した父に驚くアンドレイとイワンの兄弟。母と祖母の態度から歓迎されていないことが知れる。二人とも父の顔を知らない。写真で確認すると、戸惑いながらも嬉しさを隠せない。しかし父も母も事情を一切説明しない。三人は、翌日から二日の予定で旅に出る。二人は釣りを楽しみにしていたが、父親は行先も告げない。道中、父は横柄で、命令口調なので両者の関係は険悪となる。予定が三日間伸び、修理した舟で島に渡った。父親は隠していた何かを掘りだしたが、子供はそれを知らない。父子で諍いがあり、父親は物見の搭から墜落死した。父の遺体を舟で運んで帰ると、車の中に三人が映った写真を発見する。父親の愛情に触れたと感じたが、舟が死体と共に流された。「パパ!パパ!」初めて心から「パパ」と呼べた瞬間だったが、無常にも死体は沈没する。
奇妙な味わいの映画だ。父子の断絶を描いており、父の死という悲劇で終るが、子供にとっては、最後の最後で父の愛情を確認できたという皮肉な結果となる。この解釈では、父が掘り起こしたものは「親子の愛情」を象徴するものだ。一枚の写真を示せなかった悲劇である。その前に、イワンを追いかけた場面で、初めて父親らしい行動を見せた。だが、それは子供には通じなかったようだ。服役を終えて帰った父が、島に隠匿していた盗品を掘り出すとも解釈できる。わざわざ隔絶した島の土中に隠すのだから、こちらの解釈の方が妥当だ。家族に関するものなら念入りに隠す必要はない。お金と車を持っているので、服役ではなく、単に出奔していたのかもしれない。いずれにせよ、大切なものなら、掘り出してから帰ってくればよかったのだ。妻と母から疎まれている人物なので、死なずに戻ったとしても、喧嘩の絶えない家庭になっていただろう。
父子の断絶が平行線のまま進むので見ていて苦痛だった。宝箱の中を開けずに終った感じ。子供の行動も、レストランを探しに行って三時間も戻ってこないとか、出された食事を食べないとか、舟釣りに出て四時間も遅れて帰るとか、異常行動が目立つ。子供がもっと素直であれば、肩入れして見れたのに。父親がイワンを心配して搭を登る行動は唐突に感じた。放っておけばよいではないか。イワンが最初に「飛び降りて死んでやる」と宣言していればよかった。搭の場面は、冒頭の飛び込み台から海に飛び込む場面が伏線となっている。感心した。