1.戦争と貞操というかつての邦題は意外と内容を忠実に表現しています。戦場に向かった恋人への貞操を守るか守らないかというお話です。当時は戦争に傷つく個人に向き合った反戦ドラマとしても見ることができたのでしょうが、現代の視点では保守的な恋愛・結婚観という印象を受けてしまう物語です。縦横無尽と言えるカメラワークは確かに今見ても飽きさせないものはありますが、長回しはやはりリアリズムや個人の心情に寄り添うものではなくそのシーンを絵巻物のようなスペクタクルとして見せるための演出ではないでしょうか。爆撃の明滅の中での告白シーンなんかは演出過剰すぎです。戦争の恐ろしさを伝えるにしても不自然な描写です。ヒロインのタチアナ・サモイロワは美人なので古いメロドラマであることは前提の上で楽しむ分には悪くない作品です。それと当時のソ連への偏見を払拭するためには役立つかもしれません。