1.《ネタバレ》 兄が殺人犯として逮捕された女が、兄の無実を信じて東京の有名弁護士に弁護を依頼する。時間的に余裕もなく、依頼人にお金が無いと知った弁護士は依頼を断る。数年後兄は拘置所で病死。それを知った弁護士は好奇心から事件の資料を取り寄せ、調査する。結果犯人は左利きであることを発見、兄が無罪であったかも知れないと思う。故郷にいられなくなった女は東京でホステスとなる。弁護士と再会するが、気まずい空気が流れる。
偶々事情を知っている新聞記者は女に同情するが、女は冷たい態度を貫く。
弁護士の愛人に関係する男が殺される。事件現場に女と愛人が居合わせる。女は愛人の手袋を置き、犯人の遺留品を持ち去り、現場には居なかったと嘘の証言をする。愛人が容疑者として逮捕される。弁護士は女に真実を話すように頼み、代わりに兄の無実の証明をすると申し出る。女は承知したと言い、部屋に案内し、巧みに酒を飲ませ、強引に関係をせまる。そして強姦されたと検察に手紙を送り、弁護士生命を絶つ。
◆復讐劇だが、女が事件現場に居合わせたのは偶然。女は偶然を利用したに過ぎない。企図したものではないので、復習劇としてはインパクトが弱い。女が無実の罪で死んだ兄の名誉を晴らすことに心を砕かないのは何故だろう。あれだけの兄思いだったのに、不自然さが残る。
◆兄を殺した犯人も第二の殺人事件の犯人も誰かはわからず終了。愛人は無実の罪をきせられたまま。すっきりしないオチにいらだちも最高潮だ。女が弁護士にそれほどの復讐心を抱く理由があるだろうか?そもそも完全な逆恨みではないか。弁護士は依頼を受けなかっただけで、悪いことは何もしていない。そんな異常な女を扱っても観客からは同情は得られない。「女って怖い」ぐらいの感想しか得られないだろう。誰がみても復讐を抱くだけの理由があるようにしないと物語が成立しない。そして犯人が元投手であるとはっきりわかるように示せば、すっきりしただろう。
◆他にも疑問点がある。兄が学校のお金を落としたのに誰にも相談しなかったこと、女が弁護士にあらかじめ電話や手紙なしに訪問すること、女が味方のはずの記者に冷たい態度をとること、愛人が単に怪しいというだけの理由で逮捕されることなど。穴だらけの脚本である。日常に待ち受ける陥穽を描いた原作が泣いている。題名の「霧の旗」の旗の意味も不明。霧だから桐子?