5.《ネタバレ》 冒頭での栗山千明登場シーン、延々と状況セリフを呟きながらの自転車通勤はまるで大林宣彦映画を観てるような錯覚を覚えます。この映画をどうとらえるかは人によって違いがあるでしょうけど、私には別に大して怖くはないけどとても不快というのが正直な感想です。園子温は怖がらせるより観客を不快にさせる方が得意というか芸風なんですよね。たしかに髪の毛が人の色んな穴から生えてくるシーンはぞわぞわさせられる悍ましさがありますが、つぐみ演じるクソ女が幼児虐待に血道をあげるところが溜まらなく不愉快でした。自分は映画で幼児虐待が出てくるともう観るのを止めたくなるぐらい嫌で、佐藤未来がけなげな口調でクソ女に謝るシーンはもう涙が出そうでした。考えてみれば大杉漣のド変態オヤジも相当なレベルで、彼は気持ち悪いキャラをコミカルに演じさせたらピカイチだったんですよね。園子温の映画はたいていどこかでタガが外れて辻褄が合わなくなる傾向を持っていますが、栗山千明のストーリーと大杉漣のストーリーが無関係なところから徐々に交差してゆく語り口は園子温らしくなく丁寧だったかなと思います。それでもラストの大杉漣の最期は子温節が全開で、自分はこういうのは好きだけど、これを見せられて怒っちゃう人も多いんだろうな。 考えてみれば、あくまで冒頭の展開だけですけどプロットは『ジェーン・ドウの解剖』に通じるものがあるんですよね。でも監督が違うと月とスッポンぐらい違う映画になっちゃうところは面白いです。