1.《ネタバレ》 製作者が「そりゃうちんとこは低予算映画ですから」と開き直っているような感じがあって、いっそ潔い。広いマングローブの森なのに、ほとんどその一角、舞台は一場に限られる。相手はワニ一匹だけで、複雑な人間関係はなし。これでもっと展開に工夫があれば、その狭さ単純さが煮詰まってくれるんだけど、ワニも人間もアッと驚くようなことはしてくれなかった(ワニがジャンプするぐらいか)。89分というのもいい長さのはずだが、切り詰めた89分じゃなくて、伸ばし伸ばしやっと89分って感じ。胎児は男の形見として助かるんだろう、といった予定調和は裏切られるが、リアリティを出す上での作戦というより、ただいい加減ってみたいで。最初の犠牲者の腕が使われるあたりは、ちょっといいんだけど、それもけっきょくそれほど役立ったわけでなく、場当たり的印象。でも映画における水面の不気味さってのが至って好きなので、その点では楽しめた。すぐ近くが水面の反射によって遮られて未知の世界になっている。そこらへんをもっと突っ込んでほしかったけど、樹上の人間ドラマと水面描写があんまり絡んでこないので、たとえば下に水があるのに喉がカラカラなんて皮肉が、それほどイキてない。