2.《ネタバレ》 ドミニク・パーセルが主演のワニ映画だなんて、それだけでワクワクします。
男臭くて恰好良いパーセルが、アフリカの巨大ワニと戦い、見事仕留めてくれるのを期待して鑑賞した訳ですが……
色んな意味で、予想も期待も外れちゃう内容でしたね。
まず、思った以上に社会派というか、ワニよりも人間同士の争いにスポットを当てた作りなんです。
この場合の争いっていうのは「自分だけが助かろうと、遭難者グループ内で醜い争いが起こる」って代物じゃなく、文字通りの戦争であり、民族間の内戦。
そもそも巨大ワニのグスタヴが人喰いの味に目覚めたのは「内戦や虐殺で多くの遺体が河に捨てられた為」というのだから、云わばワニなんて内戦の副産物に過ぎない訳です。
映画の半分が過ぎても、パーセル演じる主人公は「俺はワニになんか興味無いんだ」って断言してるし、ヒロインも「ワニなんかより、ここで行われてる虐殺を世界に伝えるべきよ」と言い出すしで、作り手としてもワニより内戦にスポットを当てていたのは明白。
それが失敗だったとは言わないし、斬殺シーンや射殺シーンなどには(確かに、ワニなんかより人間の方が怖い)と感じさせる力がありましたけど……
やっぱり、普通の、王道のワニ映画が観たかったなぁって、つい思っちゃいました。
第一、社会派な内容にするのであれば、もっと事実に即した作りにすべきだったと思うんですよね。
「人喰いワニであるグスタヴ」以外は全て架空の人物ってのが、何とも中途半端。
そんな架空のドラマ部分は悪くなく「友人を失った代わりに、彼が救おうとした現地の若者を保護する事が出来たハッピーエンド」ってのは納得なんですけど、実話に即した「結局グスタヴを退治する事は出来なかった」ってオチまで付くのが、足を引っ張ってる形。
いっそワニの存在も架空にして「今回遭遇した個体は倒したけど、まだまだアフリカには巨大な人食いワニが残ってる」みたいな形にしても良かったんじゃないでしょうか。
ジャーナリストで知性派なパーセルってのも意外性があって良かったですし、カメラワークや演出なども洗練されていたのですが……
何とも勿体無い、もうちょっとで傑作に化けてくれそうな一品でした。