1.《ネタバレ》 リアリズムに徹していて、ドキュメンタリーのような見応え。
ソマリアの海賊にシージャックされた『キャプテン・フィリップス』が実話を元にしているだけにリアリティがあったけれど、本作はフィクションにも関わらずそれよりも更にリアル。
予定調和のハリウッドものとは対極にあるので、先の読めない緊迫感がある。
でも、何か物足りない。
映画はフィクションなのだから、それだけじゃないような。
海賊と直接交渉にあたる社長に共感できるか、できないか。
日本の会社とのビジネス交渉での辣腕ぶりが、海賊との交渉にも発揮される。
社員の命がかかった交渉を専門家に任せずに自ら引き受けるなど、自分だったら恐ろしくてとてもできない。
責任感と勇気があふれているともとれるが、社員の命を軽く見ているからそんな交渉を引き受けることができたとも思える。
ビジネス交渉と同じように、身代金の額をどこまでも強気で値切ろうとするスタンスからもそれはうかがえる。
交渉を何ヶ月も長引かせるのは、人質の健康や生命を第一に考えればできないことだ。
会社の姿勢に対するシェフの苛立ちと家族の焦りが胸に迫る。
もちろん社長もいろいろ悩んではいるけれど、こういう人間を好きにはなれないし、カッコいいとも思わない。