2.《ネタバレ》 都会での仕事と生活から離れ、南の島の豊かな自然の中で暮らす。都市生活者なら誰もが一度は夢想するのではないだろうか。そして、観光で実際に島を訪れると海の美しさに感化され、その向こう側に透けて見える都会の環境や暮らしとのギャップにタメイキが出て、ちょっとだけマジに考えてみたりもする。たぶんここまでが普通の流れ。でも、なかなかその先へは進めません。仕事、家族、友人、等々。クリアすべきハードルはたくさんあります。
本作の主人公の島暮らしは、トラブルがあって強制的に始まりました。なんとか生き残ってましたけど、そこはフィクション。常識的には、あんな遭難者のような生活が出来る訳がないと思う。美女がそこに加わるなんて夢のまた夢でしょう。ラストシーン、主人公が曖昧な目的のまま再び海へ乗り出すところで映画は終わります。なんともいい加減な終わり方なんだけど、実はそのあたりがホントのテーマなのかなと思いました。アクションを躊躇する人の背中を押すほどの説得力はないんですけど、思い切らない限りは生活を切り替えることは出来ませんから。全体を通したバカっぽい見え方は「私は責任とれません」と云う原作者のエクスキューズのような気もします。原作未読ですけど(笑)。
以下、余談。自分のことで恐縮ですが、1年半ほど前に東京から沖縄へ移住しました。広告業界で働いていたことも本作の主人公と被り、CMロケの描写には苦笑しました(中途半端にリアルです)。つい先日訪れた西表島では劇中の大富共同組合売店で何度も買い物をしたので、とても身近な映画でした。自分は臆病なので移住前は色々と机上で計算をしましたけど、最後はやっぱり「思い切って」でした。