3.タイトルが示す通り、なんとも「奇妙」な映画だった。
それは霊やら死神やらが登場することによる奇妙さではなく、娯楽映画として妙なバランスを見せる映画だったということ。
監督は、「ハムナプトラ」シリーズのスティーヴン・ソマーズ。愛すべきベタなB級テイストを根底に敷きつつ、小気味良い娯楽大作を毎度提供してくれる、娯楽映画好きとしてはとても信頼できる監督の一人である。
そんな監督に対する信頼感も持ちつつ今作を観始めたが、序盤から様子がおかしい。
映画のつくりが全編通してチープで、製作費がかけられていないことは明らかだった。
ストーリーもなんだか薄っぺらいというよりも、綻びまくりで“おざなり感”が半端ない。
「なんだこりゃ」と蹴散らしてしまっても仕方ないくらいの表面的なクオリティなのだが、同時に不思議な愛着も感じてしまっていた。
出来は極めては悪いけれど気になってしまうという不思議な魅力があったことは確かだ。
主人公を演じたアントン・イェルチンは、リブート版「スター・トレック」の“チェコフ君”役が印象的な若手俳優だが、今作ではなかなかどうしてナイスガイなヒーローぶりを披露してくれている。
憂いを秘めた眼差しは、「ロード・オブ・ザ・リング」のイライジャ・ウッドを彷彿とさせ、今作の役どころには相応しかったと思う。
歳を重ねることでもっと味わいが出てきそうな俳優なので、これからもっと化けそうだ。
ヒロイン役のアディソン・ティムリンも非常に魅力的だった。彼女の魅力が破綻ギリギリのこの映画を繋ぎ止めていたと言っても過言ではない。ラストの顛末も含めて、非常に印象的な余韻を与えてくれている。
どうやら製作過程においていろいろな弊害があったらしく、やっとのことで製作・公開に至った模様。
それでも一つの個性を映画に加味してみせたスティーヴン・ソマーズのエンターテイメント力は流石だと思う。が、製作環境が確保されていたなら、それこそ「ハムナプトラ」並みの人気シリーズにもなっていたかもしれないと思うと少し残念にも思う。
(「ハムナプトラ」といえば、“イムホテップ”のウケ狙いの地縛霊には爆笑してしまった。)