5.設定やキャストの大幅な一新もなく7作目まで製作され、しかも興行成績が右肩上がりに伸び続けているアクションシリーズというのは映画史上前例がなく、本シリーズはアクション映画界の老舗タイトルの一つになったと言えるのですが、内容はもういっぱいいっぱい。見せ場のインフレ状態で、目の前で起きていることは確かに凄いんだけど、凄いことが当たり前になりすぎて手に汗握らないという、娯楽アクションの典型的な衰退サイクルに入っています。フリーザ編の後にもダラダラと続いた『ドラゴンボール』を見ていた時と同じ感覚を味わいました。
第一作では遊ぶ金欲しさに長距離トラックを襲って家電を盗むケチな強盗団として登場した主人公達も、本作ではアメリカ政府の仕事を引き受ける闇の外注先に超絶ランクアップ。カート・ラッセル長官の指示の下、007かトリプルXかという勢いで世界を飛び回るのですが、そもそもラッセル長官がこのグループにテロリスト退治を依頼した理由がよくわからないので、お話はスタート時点から行き詰まっています。討伐作戦においては絶対に必要なのだが、そこいらの捜査官や軍人には備わっていない適性がこのグループにはあった等の理由付けは欲しいところでした。また、見せ場はやりすぎの遥か上を行っており、もはや生身の人間が戦っているという感覚は残っていません。『SKY MISSION』という邦題は言い当て妙で、本作において車は飛ぶものとして扱われています。パラシュートをつけて飛行機からダイブするだけではなく、いろんなものを踏切台にしてピョンピョンと飛び回るのです。そのありえない様から戦いの緊張感を味わうことなどできず、ただ画面で起こっている光景を唖然として眺めるのみでした。
こうした見せ場のインフレを見ると、007やミッション・インポッシブルといった長い歴史を持つアクションシリーズが、いかにうまく作られているかがわかります。「原点回帰」と称して地味な作品を入れたり、作風をガラリと変えたりで、やりすぎになる一歩手前でシリーズ全体の流れをうまくコントロールしているのですから。本作の大ヒットから、ユニバーサルはまだまだシリーズを継続する意思を持っているようなのですが、だとしたら、そろそろ見せ場のインフレを収める方向での調整をかける必要があると思います。