1.《ネタバレ》 日本の妖怪・女狐をモデルにした、なんとも不思議なテイストのファンタスティック・コメディ。制作したのは日本とはあまり馴染みがないハンガリー、だからなのか片言の日本語で昭和歌謡もどきのポップスを歌うトミー谷なる怪しげなムード歌手が、主人公にだけ見えるユーレイという設定で全編に登場します。このトミー谷なる歌手が歌う楽曲がなんともいい味を出していて、観終わった後もしばらく頭に残ります。お話はとても単純。日本の三文恋愛小説をこよなく愛する引きこもりがちの三十路女性リザが、運命の彼氏を見つけようと悪戦苦闘するもののいい感じになりそうになると相手の男性がことごとく変死するというお話。真相を巡って刑事やアパートのオーナーたちがどたばたとナンセンスな騒動を繰り広げます。まあコメディなので細かいことは気にしちゃダメなんだろうけど、こういうセンスで勝負の映画ってだからこそ細部が大事なんだと改めて気づかされた映画でもありました。具体的に言うと、脚本が練られていないせいでストーリーがちっとも頭に入ってこないのです。せっかくこの独特の雰囲気に思うまま酔いしれたいのに、そこのところが気になって僕はさっぱりでした。あと、トミー谷以外のすべてのキャラにいまいち魅力がないのもいただけない。特に主人公リザのキャラクターが完全にトミー谷に負けてしまっている。こういうのを観ると、いかに『アメリ』が優れた作品であったかが再確認できますね。全編に漂うこの独特のゆるーい雰囲気はけっこう良かっただけに残念です。