2.主人公の信次と健二の二人とそれを取り巻く人たちの人間ドラマとしてはかなりいい。それぞれの「家庭の事情」はステレオタイプだけれど、二人がボクシングにのめり込んでいく背景としてはそれなりに説得力がある。菅田将暉はもっとも多忙だった時期だと思うけど、それでもチンピラ上がりのボクサーをしっかり作り込んでいるし、ヤン・イクチュンの抑えた鬱屈の感じもいい。また、主人公二人のまわりを固めるベテラン陣もみんないい。ただ、原作未読なのでどこまで原作の内容を反映しているのかはわからないのだけれど、現代版にアレンジした背景の数々がうまくテーマに絡んでこない。何かの反対デモやら、自殺防止サークルやらのあたりの描き方は主人公たちの描き込みに対して、リーダーから参加者まで、妙な安っぽさがあり、あの自殺防止イベントの顛末をなぜここまで時間をかけて描く必要があるのかよくわからないし、主人公たちのドラマやテーマにもうまく共鳴しているように見えない。あと、わかってたけど、長い・・・。中途半端な群像劇になってるあたり、映画というよりもドラマのミニシリーズと言ったほうが近いような(実際、U-NEXTでドラマシリーズ版も公開されたらしい)。