1.《ネタバレ》 監督ブレイク・エドワース・音楽ヘンリー・マンシーニの黄金コンビでモノクロ撮影の犯罪サスペンスを撮っていたとは意外や意外、だいたいコメディじゃないシリアスな映画をエドワースが撮っていたことにもびっくりです。 銀行員のリー・レミックはある日自宅ガレージで顔を見せない男に脅迫されます。要求は、勤め先から10万ドルをくすねて持ち帰れ、成功したらお前にも2割分け前をくれてやる、もちろん警察にばらしたら妹ともどもあの世行きだ、ということです。ところが彼女は速攻でFBIに電話しちゃうんですが、なぜか部屋に隠れていた犯人に昏倒させられ「やると思ってた、でも二度目は許さん」と捨て台詞を残して犯人は消えてゆきます。 シャープなモノクロ撮影で序盤は雰囲気満点なんですけど、なんか脚本が甘いんですよね。もちろんすぐにFBIが捜査に乗り出して来て姿を見せない犯人とヒロインの攻防になるわけですが、彼女が通報してFBIが動き出していることに犯人が気づいていないというストーリーテリングが、なんかおかしいと思います。中盤では犯人の中国系の愛人親子が登場して話はぶれるし、けっきょくこの愛人は中途半端にフェードアウトするから余計にイラっとします。知能犯だと思わせるべき犯人像も、途中から画面に登場させてしまい単なる粗暴犯ですということが、バレバレになってしまいます。でもこの犯人のキャラ自体は不気味かつ変態チックで、女装して女トイレに現れるシーンは「うわっ、なぜか樹木希林が出てきた!」とびっくりさせられることは必定です(笑)。 SFジャイアンツが試合中のキャンドル・スティック球場がラスト・シークエンスになり、これを『ダーティハリー』とのかかわりを指摘する向きもありますが、確かにそういう雰囲気は感じられました。そうそう、リー・レミックの妹役が懐かしい『探偵ハート&ハート』のステファニー・パワーズだったことも忘れてはいけません。ほとんどデビュー仕立てのころだったみたいです。