1.《ネタバレ》 先日観賞した「秋刀魚の味」が面白かったもので
(これはいよいよ、自分にも小津映画を楽しめる器量が備わったのか?)
と調子に乗って手を出してみた本作。
で、結果はといえば……やっぱり、まだ早かったみたいですね。
監督さんの個性である独特のカメラワークだとか、演出だとか、会話の間だとかが、どうも退屈に感じられてしまう。
テーマとしては女性というか、主婦に対する皮肉なのかなと思いきや、最終的には「色々あるけど夫婦は仲良く」という結論に落ち着いてしまったみたいで、それが妙に物足りず、中途半端な印象を受けてしまいました。
「奥さんには花を持たせんきゃいかんよ」
「子供を叱る時にね、逆にこう褒めるだろ? あれだよ。つまり逆手だね」
などの台詞によって、一見すると尻に敷かれていた夫の方が、実は巧妙に妻を手懐けていると判明する件は面白かったけど、ちょっと女性を男性より下に捉え過ぎているようにも思えます。
夫に頬を打たれた妻が、その事を喜び、茶飲み仲間に話して羨ましがらせるというのも、何だか都合の良過ぎる話。
この辺りは、監督の価値観がどうこうというより、制作当時の時代性が大きいのでしょうか。
そんな風に、今一つ乗り切れない映画であったのですが、そこかしこに散らばるユーモアのセンスには、流石と思わせるものがありましたね。
特にお気に入りなのは、地球儀を使った地名当てクイズにて、周る地球儀の天辺を指差して「北極」と答えてみせる件。
その手があったかと、大いに感心させられました。
「バカ」「カバ」というやり取りに関しても、初出の場面では子供っぽさに呆れていたはずなのに、二度目に使われた際には(えっ? また使うの?)という意外性も相まって、思わずクスっと笑みが零れたのだから、不思議なもの。
ラストシーンに関しても、少しずつ部屋の灯りが消えていく様が幻想的で、好みの演出だったりするんですよね。
観賞中は退屈な時間の方が長かったはずなのに、この終わり方を目にするだけでも(良い映画だったなぁ……)と思えてくるのだから、全く困った話です。
小津安二郎という人は、今後も自分にとって評価の難しい監督さんであり続ける気がします。