1.出征する兵士の列の中に我が子を捜す母。10分くらい続こうかというその有名なラストシーンが見たくて、鑑賞したのだが、戦意高揚のための教条的なシーンが多いため、映画としての面白さはなかった。このラストシーンについては、木下監督が反戦の思いを託したシーンであり、検閲を巧妙に逃れたものだとする説を聞いたことがあるが、率直に感想を言えば、母の息子に対する愛情を表現しただけであり、検閲した者にも、そのくらいの事は十分わかったに違いない。一人前になって巣立っていく息子に喜びながらも、その身を案じる母。現代の我々にも通ずる思いであり、この映画を見ただろう帝国陸軍の将兵たちも、胸にジーンときたに違いない。途中、桜木が仁科大尉に戦地にいる息子の消息をしつこく尋ねて、たしなめられるシーンがあるが、親の子への思いがにじみでている。ラストシーンと並んで、忘れがたい場面だ。