7.まるで、体温を感じない作品。
生々しい臭気漂うエログロなのだろうと、かなり覚悟の上鑑賞したが、分厚いガラスの板を宛われて観ている様な不思議な感覚に襲われた(ある意味疎外感)
終始、金属を触れている様な無機質な冷たさを感じる印象。それはSEX描写にしても然り、ギリシャの彫刻の様で美しいが、人肌の温もりすら現されてはいない。
万人の感情移入など当然のと云った感じで望んでいない、(監督の)自己満足抒情詩なのだと。
既に壁を作って観客を遠ざけているが、更に個人(正常な感覚の持ち主)の価値観や生理的・精神的な嫌悪で観る側との距離を置いてしまっている。だが、入り込む隙が皆無ではなく絶えずそれは口を穿たれている。
映像の更に奥に隠れたモノに触れる事が出来た方は、作品を(楽しんで)観る上でとても幸運なのでしょう。事故経験者としては、あの体験で快楽に結び付く糸口すら理解できない。それも、またある意味幸運なことでしょう。
ただ、この作品を嫌いになれないのはクローネンバーグ監督が描く精神的なグロテスクさとカタルシスを垣間見る事が出来たからかも知れない。