1.《ネタバレ》 この映画の妖怪たちの描写には独特の暗さがあって、それは闇に対する根源的な恐怖や、何かが出そうな場所のヒュ~ドロドロって雰囲気なんかと一緒に、映画全体を遊園地のお化け屋敷のようにまとめている。怖いがどこかユーモラスで、ハリウッド・ホラーなどとは根本的に違う。技術的に拙い部分はあるが、自分が幼少の頃に感じていた得体の知れないものに対する畏れともシンクロして、初めて観た頃の童心が少し蘇る。悪事を働いていた奉行と商人が妖怪たちから弄ばれることは、百物語の後に「憑き物を落とすまじない」を怠ったからで、彼らの悪事とは直接関係しないはず。でも本作では、妖怪を「お化け」と称して恨みを持った幽霊のように扱っている。「妖怪」とはもともと土地に居ついた神様の一種のはずだけど、そのあたりは曖昧。そう言えば遊園地のお化け屋敷も昔から妖怪と幽霊が入り混じってる。この映画に「お化け屋敷」を感じたのはそんな理由かも。ともあれ、近年の妖怪ものには感じられない味わいがよろしいかと。