5.200年以上の歴史を持つ名門銀行の、たった1人の従業員の行為による破綻というとてつもなく非日常的な出来事なんだから、もっと背景とか人間関係とか心理の動きとかがいろいろありそうに思えるのだが、淡々と経過が叙述されているだけで、どこでどういう間違いがあってあのようになったのかという描写が存在しない。つまり、その辺にあるような横領・背任事件とそんなに変わらないのです。また、銀行そのものがそれまで社会経済上どのような意義と機能を有しており、またその破綻がどのような影響を与えたのかという前提の部分に手が回っていないため、主人公の行為の重大性を実感することもできない。