1.《ネタバレ》 忘八とは、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の八つの徳目を全て失った人間を指し転じて郭がよいに精を出す男や妓楼の主に対する蔑称、ほとんど江戸時代の差別用語みたいなもんです。小池一夫原作の劇画の映画化で、吉原の廓名主に雇われる浪人者・丹波哲郎が主人公です。この丹波の役名が“明日死能”、これで文字通り“あしたしのう”と読ませるところがふざけているというか、ぶっ飛んでいるというか…でも長髪の中年ロッカーみたいな風貌でむかし使った丹下左膳のお古のような衣装、なんですけどムダにカッコよくてやたらに強い。冒頭の殺陣から血しぶきが凄いし首は飛ぶはですけど、石井輝男の持ち味のヘンな悪趣味は最小限に抑えられている思います。“ポルノ時代劇”と銘打って吉原が舞台なのでそりゃ遊女のハダカはゲップが出るほど見せられますが、さほどエロくはない。麻痺しちゃったのかもしれませんが、言ってみればヴァーホーベンの『ショーガール』に通じるところがあるのかもしれません。見どころというとひし美ゆり子が脱ぎまくっていることで、あのアンヌ隊員がと思うと感無量です。彼女が率いる“女忘八”なるくのいち軍団みたいな集団が登場し行き掛かり上みんな全裸になる展開、その女忘八軍団が内田良平演じる黒鍬者と全裸のまま斬り合うという珍シーンもあります。とは言え荒唐無稽なストーリーながらも吉原のセットなどはけっこう良くできていて、そう言うところはさすが東映です。ラストもアヘン中毒にされた丹波が捕り手に囲まれて壮絶な斬り合いを繰り広げる、まるで『雄呂血』みたいな余韻がありました。 今まで観た東映ポルノの中ではもっともハダカを見せられた気がしますが、ゲテモノではありますが言われているほど酷い映画じゃなかった気がします。まあ、人にはお奨めできませんけどね(笑)。