13.《ネタバレ》 バートンの実写映画にうんざりしていたので意外な気がした。
この人は実写はやめたほうがいいのではないでしょうか。
映像は文句なしで完璧だと思います。死者を扱ううえでの様々なアイディアも、なかなか面白いです。
しかしいつものように、私にとっては主題が面白くはないです。
これは結婚を扱った話で、結婚に始まって結婚に終わる結婚のことを言っている話だと思う。
それはいいのだが、つまるところは「結婚はふさわしい相手でないと成立しない」というのが結論なので、そうするとこれは「人魚姫」の変形バージョンでしかなく、ようするに「結婚」は「身分」だと言っているということだ。
身分が違うと結婚できないのです。
人魚姫の別バージョンなんですから、相手は死体でなくて地底人でもマウンテンゴリラのメスでも(清原なつののマンガにそんなのがあるけど)いいので、そこで示されているのは「身分違いだからムリ」ということで、どういう形をとってもつまりは人間社会の身分のことを遠まわしに言っているのです。
だからこそそれを見たり読んだりした人は身に詰まされる。
そしてこの話は定石どおりに終わる。エミリーが魔法の力で蘇ってヴィクターと結婚したりはしない。
最初から、生きているものどうしはヴィクターとヴィクトリアなどという同じような名前になっていて、「同種」「身分」を露骨にあらわしている。
この作品は、何にも増して「お子様の視聴に支障がないこと」をファーストプライオリティーにつくられているし、実際そうなっているのだが、作り手には「徹底的に結婚の価値を貶め嗤うこと」という隠れた目的があったように思えてならない。ここでは、結婚という装置は限りなく意味がなく哀れなものとして扱われていて、それは旧世代の夫婦たちだけでなく、ヴィクターにしろヴィクトリアにしろエミリーにしろ、大した理由もなく結婚に向かっていくのである。
そういう意図は確かに感じられるけれど、そもそもが「お子様」に合わせて作られているところが私は気に入らないし、そのくせスケベ心を出して小細工を仕込むというのは…潔くないと思います。これからは、堂々と「大人むけ」と表明したうえで、ちゃんとしたものを(実写をやめて)つくってもらいたいです。とにかく実写よりはマシでした。