3.《ネタバレ》 「チェイサー」のナ・ホンジン監督だけあって、同じような血まみれバイオレンス。
出てくる人間がほとんどクズ。そして、不倫と殺害計画が重なって人間関係が入り込んでいるので、わかりにくくて混乱する。
見終わっても何だか腑に落ちないところもあったのでゆっくり整理していくと、そもそもの事件の原因は大学教授夫妻がダブル不倫をしていたこと。
教授はバス会社経営のヤクザ社長の女に手を出し、教授の妻は銀行員とできていた。
そこでヤクザ社長と妻&銀行員の教授殺害がバッティングするというトンデモ展開。
妻&銀行員の計画は朝鮮族の元締めであるミョンに渡って、金に困っていた主人公グナムが引き受け、ヤクザ社長の計画は教授の運転手を巻き込んで子分たちが実行するというもの。
結局、グナムが実行しようとする直前に、ヤクザ社長側が実行してしまったて、グナムはなんだかんだで社長からもミョンからも命を狙われる。
「チャイサー」で主役だったキム・ユンソクは、今回は悪の親玉。でも韓国映画によくある陰湿で気持ちの悪い悪党ではなく、あっけらかんと下衆すぎて清々しいほどだった。
グナムはとことん哀しい男として描かれる。
朝鮮族として差別され、出稼ぎに行った妻は帰ってこず、教授殺害事件で手助けしようとした教授の妻は殺害の共犯だった。
死んだと思った妻は実は別人で、詐欺師に騙されて葬儀費を取られたりと踏んだり蹴ったり。
ラストで実は妻は生きていてグナムの死んだことを知らずに帰郷するのが、更に哀れさを増している。
ギャンブルの借金から人殺しを請け負うような男だから罰が当たっても当然とはいえ、さすがにちょっと気の毒になるほど。
バイオレンスは真に迫っているが、いろいろ詰め込みすぎたストーリーに無理があって、グナムの妻の失踪と同時に妻と勘違いするような女が殺されていたのも都合が良すぎる。
整合性は度外視して、ただ単に紛らわせて盛り上げようという監督の意図が透けて見えてしまう。
同監督なら「チェイサー」のほうが素直で出来が良い。