1.《ネタバレ》 なかなか面白かったです。にも関わらずこの点数なのは、観終わった後にたくさんのモヤモヤや謎が残るから。
だいたいケラー父さん、やりすぎ。最初のうちは「気持ちわかるぜ」と思って観てたけど、途中から「気持ちが抑えられないんだ」「こうでもしなきゃ殺してしまう」とか言い出して大暴走。ブツブツ「神よ赦したまえ…」と赦しを請いつつ、10歳程度の知能しか持たない人間に対し、絶対にしてはいけない拷問をやりだした。たとえどんな理由があろうと、これはイカン。父さん「暴力衝動を抑えられないただの暴力男」に成り下がり、観ているコチラは「もっと頭を使え!10歳児をおどしたってビビって嘘つくだけだろ。障がい児に対する話の仕方を勉強して出直してこい!」と説教したくなってしまったよ。
で、タイトルの「プリズナーズ」ってナンだ?誘拐された少女たちのこと?と疑問を抱きつつ観ていたのですが、お手製の「身動きする事すらできない狭い独房」にアレックスが入れられたので、「ああ、囚人というより囚われ人って感じのプリズナーね…でもなにゆえ複数形?」と思ってたら、クライマックスで父さん地下の穴に閉じ込められて、自分もプリズナーになっちゃった。そういやケラー父さんの父親は刑務官で、英語だとprisoner officerだしねぇ…「なるほどプリズナーがいっぱいで複数形!」と納得…で、刑事が笛の音に気づいて、たぶん父さん助かるけど、その後は刑務所行きで本当のプリズナーに!オチがついてるわ…と、ちょっと脱力しました。ははは。
いえ、たぶん聖書をよく知る人が見れば、きっとコチラが抱いた疑問のシーンや台詞にもぜんぶ意味があることがわかるんだと思いますよ。たくさんの蛇(悪魔の象徴?)とか迷路とか自殺しちゃった男の役割とか、刑事さんのたくさんのタトゥーの意味とか。でもあいにく当方無神論の日本人なので。「そういや、冒頭でも祈った後に鹿を殺してたしなぁ。ケラー父さんの信仰って、しょせん自分に都合いい程度なんだよなぁ」とか、皮肉にしか観られませんでしたよ。
難解というよりは、信仰を持った人間向けの映画、という感じで、そこがちょっと期待外れでした。中世の絵画じゃないんだから、象徴とかヒントをちりばめるのはストーリーの謎解きだけにしてほしいな。
それとケラー父さんの行動は、肯定してはいけないと思う。たとえどんなに信仰心が強かろうと、あの行動は人間としてダメだし、第一怖いよ。なのでたぶん異教徒の象徴としての刑事さんに、ぜひ応援の一票を入れたいです。