2.《ネタバレ》 当て書きだったこともあってダウニーJrはハンク役に完璧にハマっているのですが、少年の心を持つ不良中年、芯の通ったひねくれ者といういつものダウニーJrなので、特に目新しいものはありません。娯楽作で活躍する彼が、プロデューサーも兼ねて小規模予算のドラマ作品に出演したからには、俳優として何かしらのチャレンジがあるのだろうと期待したのですが、そういうものは見られなかったので少々ガッカリしました。他方、ジョセフ役のロバート・デュバルは御年83才にして体を張っており、こちらの演技には目を見張るものがありました。磯野波平を10倍濃縮したような頑固オヤジぶりと、年齢に勝てず弱っていく老人ぶりを同時に見せるという器用な演技を披露しており、演技の幅の少ないダウニーJrをうまくフォローしています。
父と子の対立と和解が作品の主たるテーマであり、ソリの合わない父親を田舎に残している私としては、他人事とは思えないお話だったのですが、これがビックリするほど心に刺さりませんでした。この手のシナリオのテンプレートに当てはめて作ったようなお話で、あまりに無個性なのです。長めの上映時間も有効には活用されておらず、似たり寄ったりの話を何度も繰り返すのみなので、途中で飽きてしまいました。とどめはエンドロールに流れる音楽で、ご丁寧に本作のテーマをすべて歌詞にして歌ってくれます。「大丈夫、もうわかったから」と言いたくなりました。
法廷劇としても中途半端。いかにも出来るげに登場したビリー・ボブが主人公達を苦しめる強敵となるのかと思いきや、こいつがほとんど活躍しません。ハンクを阻む最大の敵は、容疑者であるジョセフその人。ハンクは、ジョセフがしらばっくれることで故殺の疑いからは逃れられるような導線を作るのですが、肝心のジョセフがこの作戦に乗ってこないのです。これにはさすがにイライラさせられました。ハンクは勝つために何でもやる弁護士であることは当初から分かっていたのだから、そのやり方に従えないのであれば、そもそもハンクを雇わず、心根の優しい田舎弁護士にでも頼んでいれば良かったのです。一度はハンクに弁護を任せながら、その作戦にうだうだと文句をつけてくるジョセフがめんどくさくて仕方ありませんでした。そして、容疑者自身に勝とうという目的意識のない裁判では、さすがに手に汗握れません。