1.《ネタバレ》 いきなり結末に触れています。未見の方はご注意ください。
最大の関心事は、千代里とアサダが再び巡り合った経緯です。最も現実的な可能性は、アサダが千代里を呼び寄せたパターン。でも、それは母娘に別れを告げた男の決断に反しますし、再会時の驚いた様子や、砂浜を共に歩くシーンでの会話とも矛盾します。よってこの説は却下。次に考えられるのは、千代里がアサダを探し出した可能性です。アサダは2人にとって思い出の料理屋に身を寄せていたのですから、彼女の捜索網にかかっても不思議ではありません。ただ、それなら店主から「お前を探している女がいるぞ」くらいの事前情報は入りそうなもの。よってこの説も不採用。となると、残る可能性は『偶然』です。アサダを見つけた時の千代里のリアクションの薄さは気になるものの、彼女がこの再会を必然の『運命』と捉えているなら、あの態度も府に落ちます。ただ、そうだとしてもこの『偶然』、少々キナ臭いのです。何故アサダはあの料理屋に居たのかという話。もちろん馴染みの店なのでしょうが、同時に千代里が訪ねてくる危険性も排除できません。もし男が本気で母娘と縁を切るつもりなら、あの店を選ぶ道理はありません。そう、アサダは千代里が訪ねてくることを内心期待していたのでは。自分が呼び寄せるのは道義的にNGでも、彼女から見つけてもらう分にはOKという理屈。狡い。あくどい。でもその下心は理解できます。親子ほど年齢差のある年下美女をGETできる大チャンスを棒に振る独身男など、この世に存在しないのですから。彼は2人に別れを告げることで泥沼関係を一旦清算し、奇跡の再会に賭けたのだと思います。いやー見事な博打でした。アサダ自身も理解しているように、千代里の恋心は経験不足とファザコンによる『気の迷い』の類。一般的にいう『虎舞竜シンドローム』というヤツです(失礼。そんな言葉はありません)。2人の関係が、恋→愛→情と上手く成熟させられれば長続きするでしょうが、私は5年以内の決別にスーパーひとし君人形を賭けたいと思います。
さて、主演を務めた山田愛奈さんについて。基本的に表情が薄く、台詞も棒読みで、演技が上手いとは思えません(ごめんね)。ただ「今時のJK」感は抜群でしたし、感情が見えない事がかえって『女の業』を感じさせました。エンドロール直前の彼女の一言は完全に『ホラー』ですが、安易に『ロマンス』に落とし込む話でもないので、結果オーライだった気がします。また高橋由美子さんの『恋多き女』役もお見事でした。高嶺の花ではなく(失礼)、手を伸ばせば手に入る感が絶大で、現実の『モテる女』とはああいう感じの女性なのだと思います。名作ドラマ『南くんの恋人』でお馴染みの美少女が、このように成長したと思うと何か得も言われぬ感慨もあったりします。