1.《ネタバレ》 亡くなった人が想いを残した人のもとを訪れる、そういう設定の映画はたくさんあるけれど、皆、想いを遂げたあとの霊(魂)は天国へ召されていく。
しかし、この映画はちょっと違う。(以下ネタバレ全開です。)
現れた霊?は明らかに人格があって自由行動するのだが、彼はカセットテープに記録されたデータ(或いは思い出)に過ぎないというのだ。それだからか、アキは恋人に自らの来訪を告げることもできず、仲間に上書きされていく記録(記憶)の影で消滅していくことになる。
夜空の下、カナがアキへの想いを口にしながら泣き崩れる印象的なシーンがあるが、そのカナを慰めるように抱いているのが他の男で、亡霊?のアキは眺めているしかない。
なんという残酷で救いのない映画なんだろう。
ラストで陽気に歌う仲間たちの前で誰にも気づかれることなく消えていくアキを見て、私の胸にポッカリ穴が開いたような嫌な感覚が後を引いた。